Voice
デザイナーの理想と現実

「誰にでも受け入れられる」より「誰かにだけしっかり届く」デザイン
せっかく作るチラシであれば、より多くの人に受け入れられて反響のあるものにしたい。
多くの人が望む考え方であるが、目的やターゲットを十分に絞らずに作ったデザインは情報に起伏がなく内容の特徴が薄いため、結果として期待していたような反響は得にくいだろう。
デザインで紹介する商品やサービスには必ず目的や対象となる年齢層などが存在し、それらの条件をもとに掲載するべき情報を絞り込んで内容を作り込む事が大切である。
デザインに必要な情報は当たり障りのない平坦な情報ではなく、商品やサービスを必要としている特定の層にだけ向けられた凹凸感のある情報である。
起伏の少ない平坦なデザインは人の心に響きづらい
例えば、随分前にYouTubeの動画で話題になったピコ太郎のPPAPがある。
大多数が好印象を受けていたが「意味が分からない」「どこがいいの?」などネガティブな意見も見受けられた。
では、そもそも万民受けを狙って動画を作成してアップロードしたのだろうか?
恐らく自分のやることに嫌悪感を抱く人もいることを念頭に、自分が楽しいと思うスタイルで、これを楽しいと感じてもらえる人やファンをターゲットにして作ったのだろうと思う。
YouTubeなどの動画を見ていても、情報に起伏を感じない一般向けの動画はおもしろみに欠けるし、見ていても印象に残りづらい。
それはデザインにおいても同じことで、「あの人にも、この人にも」と皆にいい顔をしたデザインは、結局誰に対して何を言いたいのか伝わらず、誰に対しても影響が薄くなるのだと感じている。
「興味が持てない人には興味が持てない内容」でいい
もし、あなたが新聞購読者であれば、近所のスーパーや不動産、パチンコ屋、学習塾など様々な折り込みチラシに毎日目を通していることだろう。
しかし、興味のない広告は一瞬見るだけで横に避け、自分に関係のある興味深い広告だけを潜在的に選別してじっくりと見ていないだろうか?
誰にでも興味あるものと無いものが存在し、興味が無いものに対してわざわざお金や時間を使おうと考える人は少ないだろう。
興味が無い人を説得して興味を持たせることは大変な時間や労力を要するが、もともと興味を示す人を取り込むことは難しいことではない。
つまり、新聞に折り込まれたチラシや街角に立てかけられた冊子は興味をもたせる仕掛けであり、興味を示した人だけにより興味深い内容を掲載して取り込めればいいのである。
無駄な労力を最小限にしながらターゲット層を決めればダイレクトにメッセージが届く
デザインは誰にでも優しくウケの良い情報を並べただけの平坦で起伏のないものではなく、特定のターゲット獲得を目指した内容にしなければ目的を達成できない。
そもそも、何をどうしたくてデザインしているのか考えれば、誰に何をどのように伝えれば良いのかが見え、自然と情報に起伏が生まれるものである。
効果的で優れたデザインとは、あれもこれもと情報を詰め込まず、伝えたい層に向けて必要な情報だけを届けられる突出して際立ったデザインのことである。