How-to

デザインの方法と考え方

これからプロのデザイナーを目指そうとする人たちへ

最初の連絡で依頼者が知りたいのは金額やデザインの流れではない

最初の問い合わせはフォームやメール、電話からはじまります。
依頼者から受ける最初の連絡からは、良くも悪しくも多くのことを学べます。
依頼者が最初の連絡で知りたいことは、料金や工期、作業の流れなどを想像しがちですが、どうやらそうでもなさそうです。

人生で初めてデザインを依頼する人が発する第一声は、「チラシを作ってもらいたいのですが、どうすればいいでしょうか?がほとんどです。
これは、近所の悪ガキにガラスを割られ、修理業者にいきなり「ガラスが割れたんですが、どうすればいいでしょうか?」と話すようなもので、業者としては「じゃぁ、どうしたいんですか?」と聞き返したいところでしょう。

当初は「どうすればいい」という表現が何を指しているのか理解できず、ずいぶんと悩みました。
今でも明確ではありませんが、依頼前3つのお願いに示すとおり、打ち合わせをする前に、料金や実績などを確認し、他社とも比較してもらい、デザインの目的を明確にして書き出してもらい、必要な素材を揃えてもらうように伝えています。
何のためにデザインが必要なのか明確ではない依頼者が多いので、連絡後すぐに打ち合わせをしても時間の無駄になるため、打ち合わせをする以前に十分考えてもらいます。

最初に受けた連絡で大切なことは、依頼者が感じている不安や疑問をできるだけ取り除き、最低限必要な内容把握をして、今後のデザインの進め方を伝えることです。

打ち合わせは制作に必要なヒントがたくさん隠れている

打ち合わせシートとICレコーダーで、言葉に隠れたデザインのヒントを感じる

正式に受注すれば、デザイン内容の詳細を打ち合わせします。
遠方や打ち合わせの必要が無ければ、必要な資料やデータをメールで送ってもらいメールと電話で進めます。
通常は表現の細かなニュアンスや人柄を知るためにも直接対面して打ち合わせすることがとても大切です。

打ち合わせには独自の「打ち合わせシート」や「ICレコーダー」が必須アイテムです。
ICレコーダーは、聞き逃し解消や内容伝達のトラブルを防ぐ効果があります
私も当初は打ち合わせ内容を簡単なメモ用紙に書いていましたが、後日メモを見返すと不明瞭な箇所を発見し、結局電話でその内容を再度聞くこととなり、それ以降はICレコーダーを導入しています。
注意点は、後日聞ける安心感から打ち合わせが注意散漫にならないよう、ICレコーダーはあくまで補助的な役割と考えるべきです。

もう一つ大切な必須アイテムに打ち合わせシートがあり、必ず聞くべき項目をまとめた自分オリジナルの打ち合わせシートを作成して持参すれば聞き漏らしを防げます。

デザインは提出された資料や画像などの素材を並べる作業ではなく、人やモノ、環境、自然などから得られる全ての要素を凝縮して創造する作業ですので、打ち合わせだけではなく会社や店舗を実際に訪れて周辺を歩くなど「感じ取ること」も大切です。

集めた情報を分解・咀嚼する作業でデザインの80%が決まる

伝えるべき情報を的確に届けるため、まずは情報をバラしてから組み立て直す作業が重要

打ち合わせで得た情報を元にPC上ですぐにでもデザイン作業を始めたいところですが、まずは打ち合わせの内容や資料の情報などをバラバラに分解し、新たに必要な情報を追加するなどボリュームアップを図り、情報の優先順位を考えながら情報を咀嚼してデザインの方向性を決めます。

デザインはいきなりパソコンで始めるのではなく、机上に広げられた資料や情報を箇条書きでも鉛筆で紙に文字として書き出し、サムネイルに描き上げるという今後のデザインを決定づける最も時間を要する大切な作業となります。

情報をまとめ直すことなく勢いだけで作成されたデザインは、内容に強弱がなく、平面的で薄いデザインとなりがちであり、何が重要で最も伝えたい情報なのかわかりづらいデザインになります。
また、事前に十分時間を使ってこの作業を行うことで、PCでの作業時間を大幅に短縮させることができるため、情報を分解して咀嚼する作業はデザインにおいて不可欠です。

残り20%で一気にデザインの完成を目指す

情報のデザイン方法を考える作業から、デザインに彩りを与えて肉付けする作業へ

これまでの作業は、点在した情報を決まったカテゴリーに分け、優先順位をつけて情報に強弱をつけてレイアウトする、いわば基礎となる骨組みをモノクロ状態で作る作業でした。
概ね80%程度の作業は既に完了している状態で、残り20%でモノクロのイメージに色付けし、骨組みに肉付けする作業をPC上で行います。

考えを練りに練って紙面上に描き出したサムネイルをそのまま画面上で再現できることは稀で、作業中により良いアイデアやレイアウト方法を見つければ臨機応変に変更する対応力が必要です。
これまでの経験上、最良のデザインは一番最初に頭の中で描いたデザインで、修正を重ねるたびにクオリティは落ちていくため、ひらめきを大切にしています。

デザインソフトの機能性向上に伴い、非常にシンプルな表現から凝ったデザインまで可能ですが、ただ美しいだけではなく、伝えたい内容をしっかりと伝えられる表現が必要です。

デザインは一日寝かすことで違う表情を見せる

勇んですぐに提出せず、画面と出力、その日と次の日の感じ方や見え方の違いを観察する

デザイン作業が終われば、必ずインクジェットやレーザープリンターで出力し、レイアウトなどを確認・微調整します。
通常のレイアウト確認はインクジェットなど簡易的なプリンターを使い、特に食べ物や人物を扱うデザインは、しっかりと色調整されている出力センターのレーザープリンターなどを利用して色の確認をしましょう。

そして、提出するまでに十分時間が取れない場合を除き、提出まで最低1日は時間をとるようにします。
十分に練られた内容のデザインでも、レイアウトや色のバランスが当初のイメージと違っていたり、思わぬミスをしていたり、作った直後と翌日では感じ方や見え方が異なるからです。
不動産選びと同じように、事務所と家、昼と夜、屋外と屋内など、時間や場所により違った印象を受ける場合があるため、重要な案件ほど時間に余裕を持ち、しっかりと何度も見直すようにします。

結論

見た目だけを評価する依頼者もいますが、デザイナーにとって大切なことは、美しさを追い求めることやソフトを使いこなす技術ではなく「考える」という作業であり、目指すターゲットへ的確に情報を届けることです。

そして常に結果を求められるため、真摯に取り組み依頼者が納得したデザインでも、反響や影響力が乏しければそのデザインは失敗です。
デザインの役割は依頼主の売上や業績向上という目的の達成にあり、そのために消費者を動かす必要があるわけです。

「パソコンを、操作できればデザイナー」
そう揶揄される時代ですが、私が考えるプロとアマの違いは、決して見た目だけにとらわれず情報をまとめる力や伝え方に優れ、消費者の心を動かし依頼者の問題を解決できるデザインだと思います。

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