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デザイナーの理想と現実

現状見る商品のデザインは消費者の脳に潜在的に刻み込まれている
現在世の中にある商品に目を向けると、未だデザイン的に手を加えられそうなモノに出くわす。
しかし、あまりにも普段見慣れて十分認識しているために気付かないことも多く、意識しなければ見過ごしてしまうことがある。
特にスーパーで販売されている多くの商品は、昔から目にしたり普段何気なく購入しているため、人間の潜在意識が商品購入の判断材料になることが多く、改めて立ち止まって考えることは少ない。
例えば、スーパーのイチゴ売場を想像してみると「イチゴが透明のパックに並べられ、上から透明フィルムが被せてある」という光景を容易に思い浮かべられる。
これは、日本人にはおなじみの販売スタイルだという意識があるからだろう。
でも、「なぜフィルムにデザインをしないのか?」と疑問を感じる人はそれほど多くない。
恐らく、イチゴを購入する人は大きさや鮮度など商品自体に注視し、フィルムで商品を選んでいないからだろう。
たとえフィルムにデザインを施したとしても売上が伸びる保証はなく、売り場や売り方など他の問題があるのかも知れない。
先日果物の卸店から、これからは差別化を図るために箱や袋など商材のデザインにも力を入れ、スーパーなどに売り込めないかという相談を受け、その話をきっかけにスーパーを訪れ各商材を物色してみたが、たくさん予算をかけられる有名メーカーはデザインにも力を入れている反面、中小のメーカーほど簡素なデザインである傾向を感じた。
長い歴史を持つデザインは現在に至るまでの試行錯誤の末に生まれている
様々なタイプのデザイン案を考えるうち、ふとあることに気付いた。
比較的簡素なデザインが多いのは「商材にできるだけお金をかけたくない」という予算的な考え方とは別に、長い販売の歴史の中でデザインの試行錯誤が繰り返され、無駄な要素が取り除かれて洗練された結果、簡素だが影響力のある現在の姿になったのだろうと考えられる。
例えばイチゴのパックであれば、商品に被せるフィルムをこれまで様々なデザインをして販売してきたが、 。
あくまでも商品の鮮度や色つやが大切な生鮮食品においては商品の美しさや味で勝負すべきであり、過剰なデザインでごまかす必要はないのかも知れない。
自分が見ている現状だけで物事を判断せず、それに至った要因や変遷なども含めて新たなデザインを生み出す必要がある