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デザイナーの理想と現実

お互いの顔を知り長く付き合えばデザインは改良していく
デザインは依頼者との付き合いが長く深くなることで改良・改善していくものだと感じる。
仕事を依頼された初回から誰もが満足できるデザインにすることは難しく、せいぜい5割から良くて7割程度しか結果を残せない事が多い。
付き合いが浅い段階は相手が求める感覚や表現がわからず、それを繰り返すことで徐々に穴が埋められていく。
結局、依頼者との付き合い方は、長く深くが理想的であると行き着いた。
一度きりのデザインの依頼で結果を出す難しさ
以前から付き合いがあり何度もデザインの依頼を受けているのとは違い、ネット経由で遠方からデザインの依頼を単発で受けた場合、打ち合わせはメールや電話で直接対面もできないため、一度で依頼者の考えや趣向を知ることは難しくデザインも多少の不安を抱えながら作成することが多い。
様々な話をする中で瞬間的なひらめきや発想が出ることもあるが、長い付き合いの中で徐々に培われていく考え方や求める色などに優るものはないと感じている。
プロのデザイナーであればどのような状況でも最良のデザインを求められるのが当然だが、プロ野球における代打のように一球入魂で集中しても内野ゴロで終わることもあり、一度のチャンスで仕留めることの難しさを痛感している。
信頼関係や良質なデザインは依頼者との対面で生まれる
クラウドを利用したデザインコンペは依頼者・デザイナーともに多くの人が利用しているサービスであり、実際にデザイナーとして数回参加したことがある。
依頼者にとっては登録デザイナーから数多くのデザイン案を提示されるためメリットは大きいが、依頼内容は文章のみで直接対話できないため、依頼者の思いやこだわり、人となりは全く伝わらず、全体的に薄い内容の表面的なデザインが多い印象を受けた。
依頼者の体温が一切感じられないため、なぜその案を選んだのかという基準や本当に満足しているのかなど一切わからない。
ひとつの依頼に対して質より量を求める依頼者には適しているが、こだわりがあり内容をしっかりと伝えて作りたいという依頼者にとっては、物足りなさやムダな時間を費やす結果になるかもしれないと感じた。
仕事は依頼者とデザイナーの信頼関係で成り立つので、依頼者とデザイナーの顔が互いにわからない状況では十分満足できるデザインは生まれない。
ネット上のデザインコンペを通して感じたのは、とりあえず仕事として成立させるだけの温もりが一切ない冷徹な世界だった。
デザインで量より質の良さを求めるなら互いを深めること
インターネットの技術が進歩したことで全国規模でデザインの受発注が可能になり、デザインコンペのように少ない費用で多くのデザイナーからデザインの提案を受け、デザイナーも仕事の量的機会には恵まれたが、依頼者の満足につかがっているのかはわからない。
依頼者にとっては理想的なデザインであれば満足なのかもしれないが、本来は集客や売上など問題が解決しなければ意味がないはずである。
デザイナーの使命は依頼者の問題をデザインで解決することにあるので、一つの作業としてデザインを片付けず、考え悩みながら問題解決に取り組む姿勢こそ理想的である。
そのためには、依頼者とデザイナーがお互いを深く知り長く付き合うことで信頼が生まれ、より良い理想的なデザインにつながるのだと思う。