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デザイナーの理想と現実

良いデザインを生み出せるかどうかは、これまで見てきた作品や資料の質と量の多さに比例すると考えている。
デザインと向き合う時、事前に集めたチラシや市販の雑誌・書籍など様々な資料を参考にすることが多い。日夜これまで蓄積された様々なヒントやアイデアをもとに、新たなデザインを生み出そうとしている。思うに、どれだけ蓄積された良い情報を持ち合わせているかで、デザインが変わってくるような気がする。「アイデアとは、以前に自分が経験した事柄や見たものからしか出てこない。
アイデアは何もないところから急に出ることはほぼない。
例えば実験で新たな物質が生まれる瞬間も、これまで蓄積されたノウハウを試す課程で生じている。だからこそ日頃から様々な情報に目をやる事が大切になる。
デザインの世界では、参考となる資料やチラシを「断捨離」するという行動は存在しない。
デザイナーという生き物は、新しい雑誌や優れた参考資料が出るとついつい衝動買いしてしまい、いつしか机の周りはデザインの資料だらけになってしまう。その時は必要性を感じて購入するが、数が増えるに従って場所を取るため、多少のわずらわしさを感じてくる。一般的に「断捨離」という言葉があるが、集めたチラシやデザインの資料全てが力を生み出す源だと思えば、いくら古い資料でも簡単には捨てられない。
集めたデザインの参考資料は新旧など問題ではなく、時代遅れのデザインであっても、そこから新たな発見はできるし、デザインそのままを利用することはないので、できるだけ多く集めた方がいいと感じている。
パソコンソフトの操作を覚えるよりも、しっかり頭で情報をアナログ的に捉える練習が大切。
誰でもパソコンが使える時代だからこそ、これからデザイン業界を志すなら、技術やソフトの使い方を学ぶのではなく、まずは優良な資料を多角的に見て、世の中にある情報を感じ、学ぶことが大切。自分が良いと思うデザインは時代と共に変化するが、ほとんどの場合良い変化である。
何度も同じ資料を見ても自分の成長と共に違って見えてくる。だからこそ資料の新旧は問わない。様々なモノを参考にしてデザインの基礎を築けば、新たな発見や手法が生まれ、対応力がつく。パソコン操作を駆使した小手先だけのデザインにたよらず、じっくりと何年もかけて蓄積した情報で創り上げたデザインは、理路整然として説得力がある。
毎月一度はチラシや資料集め、書店へ足を運ぶことで刺激を受け、新たな発見が得られる瞬間がある。今後も様々な観点からデザインにとって良い資料を増やしていこうと思う。