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デザイナーの理想と現実

柔軟な対応が望まれるフリーランスにとっての契約書の存在
デザインの世界における契約書の存在は、時に重要であり時に大きな壁となる。
本来どのような立場であっても契約書は必要とされ、支払いのトラブルが発生した際には重要な資料となる。
しかし、特にフリーランスなど小規模になれば、依頼者に堅苦しさを感じさせたり、面倒くさく感じられ他に仕事が流れてしまう可能性もある。
非常にジレンマを感じる。
大企業でもフリーランスでも仕事に大切な存在の契約書
ビジネスにおいて契約書は非常に大切な書類であり、仕事をする上でも必ず交わす書類のひとつでしょう。
大企業やメーカーになると当然のように細かな契約書が存在し、ひとつの仕事に対しても作業契約書などがあるでしょう。
しかしデザイン業界に話を移すと、契約書を交わす習慣はそれほど多くないように思います。
なにかビジネスでトラブルが起きてからその存在の大切さに気づくものですが、フリーランスのデザイナーや小規模事業主の方で気になる方は、契約書を必ず取り交わすようにしましょう。
契約書は煩わしい反面いざという時に最大の武器となる
デザインの仕事で「契約書」は必要なのか?という疑問が常にある。
というのは、様々な業者との取引をしてきたが、ほとんどの事業所と契約書を交わした記憶がないからである。
チラシなど印刷物のデザインに限らず、Web業界でも同じなのだろうか?
個人や小規模事業主の場合、契約書を取り交わすデザイナーは少ないかも知れない。
デザイナーになって10年以上経過し、契約書を積極的に採り入れない大きな理由のひとつは、契約書を交わす煩わしさで依頼をのものを断られるのではないかという恐れがあるから。
多くの依頼者は時間がなくすぐにでも制作してもらいたいのに、契約書というハードルを設ければ依頼自体が他に流れかねないという思いがある。
契約書がないためにトラブルに遭遇しても弱い立場に
ほとんどの取引先では契約書がなくても問題なく作業を進められるが、時に難しい相手もいる。
デザインの作業ではトラブルは少ないが、支払い近くになると一悶着巻きおこる。
少額訴訟に発展した事件では契約書があれば勝てていたが、最終的に調停になって納得いく金額を提示して全額支払ってもらえなかった。
さすがに契約書が必要だと感じたが、訴訟を起こす必要がある取引先は滅多にないし運が悪かったのだろう。
顔がわからない、つまり直接顔を合わせて打ち合わせしない取引にも注意が必要である。
以前はWeb経由で遠方からの依頼を受けていたが、数件支払い時に連絡が取れず雲隠れされた経験がある。
それ以降打ち合わせできない遠方の取引は受け付けていない。
おそらく遠方なので追いかけても来ないだろうという考えで連絡を絶ったのかも知れない。
これまでの経験からすると、契約書がないことを支払い遅延などの理由にする人は少なく、単純に支払えなかったり支払いたくない人が多く感じる。
仕事上のトラブルを避けるために最低限の取り決めが必要
デザイン料金は一定の相場があるとはいえ、実際にはデザイナーによりバラバラなのが実情。
A4サイズを5,000円でやりますよという人がいれば、6万円かかりますという人もいる。
物販と違って決まった販売価格があるわけではなく、その金額が妥当かどうかは依頼者の判断に委ねられる。
しかし、例え少額であれ制作費用を払ってもらえないのは、特にフリーランスにとっては厳しい。
若い時代は「これも勉強」と泣き寝入りすることも多く実力を付けることに力を注いだが、既にそういう時期ではないので何か対策が必要である。
事細かに取り決めを記した契約書を作成する必要はないのかも知れないが、今後はこれまで様々経験した事柄を元に、最低限の取り決めを作る必要はあるだろう。